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フランク・ロイド・ライト  世界を結ぶ建築


フランク・ロイド・ライト《クーンリー・プレイハウス幼稚園の窓ガラス》1912年頃 豊田市美術館蔵





今年は暖かい日が続いたせいか、まだ秋の気配がいつもより遠くに感じられます。


とは言え日中は穏やかで過ごしやすい日が続くと、食欲の秋やら読書の秋やらあれやこれやと気持ちが盛り上がってきます。


そんな秋にさて、どこに出かけようかというところでおすすめの展覧会をご紹介させていただきます。


『帝国ホテル二代目本館100周年 フランク・ロイド・ライト 世界を結ぶ建築』



フランク・ロイド・ライト、アメリカ近代建築の巨匠にして世界三大建築家のひとり。


ご存知の方も多いのではないでしょうか。


「カウフマン邸(落水荘)」や「グッゲンハイム美術館」で知られるライトは、「帝国ホテル二代目本館(現在は博物館明治村に一部移築保存)」や「自由学園明日館」を手がけ、熱烈な浮世絵愛好家の顔も持つ、日本と深い縁で結ばれた建築家です。






フランク・ロイド・ライト《『リバティー』誌のための表紙デザイン案 柱サボテンとサボテンの花》1927-28年 米国議会図書館版画写真部蔵 Photo: Library of Congress,LC-DIG-ppmsca-84873





今回の展覧会タイトルでもある『帝国ホテル二代目本館100周年』


帝国ホテルが落成したのは、いまからちょうど100年前の1923年、関東大震災の発生当日。

災禍を生き延びたことで、ライトに大きな名声をもたらしたこの帝国ホテルは、広大な敷地に客室のほか劇や舞踏会室などさまざまな施設を備えた、それ自体が都市であるかのような壮大なプロジェクトでした。


最初の構想から10年の歳月をかけて実現した帝国ホテルには、アメリカ中西部からラテンアメリカ、ヨーロッパ、日本まで、ライトが経験した様々な風土と文化から取り入れられた要素が凝縮されています。またこのときの経験や建築についてのアイデアは、後のライトの建築や都市計画にも形を変えて様々に展開されていきました。

周囲の景観との有機的なつながり。ミクロとマクロ、部分と全体のダイナミックな共鳴。

自然と結びついた高層建築の構想。帝国ホテルとはまさに、彼にとって結節点に立つ建物だったことがわかります。



「東洋の宝石」と謳われた当時の帝国ホテルは正面玄関前に設けられた池を囲むように、低層のシンメトリーな建物で構成された。外内装には栃木県で産出する大谷石や常滑で焼かれたスダレ煉瓦を用い、目の前の日比谷公園の緑に調和するような構造と装飾を取り入れるなど、他に類を見ない特別なホテルでした。







フランク・ロイド・ライト《第63葉 ユニティ・テンプル、透視図  『フランク・ロイド・ライトの建築と設計』》1910年 豊田市美術館蔵 




2017年にニューヨーク近代美術館で大々的に開催されて話題を呼んだ

「Frank Lloyd Wright at 150: Unpacking the Archive」

同展の企画メンバーであったケン・タダシ・オオシマ氏とジェニファー・グレイ氏による全面協力のもとに本展は実現したとのこと。

展示では、2012年にライト財団からコロンビア大学エイヴリー建築美術図書館とニューヨーク近代美術館に移管された、日本初公開となる建築ドローイングや図面の数々を紹介しています。

緻密で繊細、構図にも工夫を凝らしたライトの建築ドローイングを間近でご覧いただけるまたとない機会です。







フランク・ロイド・ライト《ゴードン・ストロング自動車体験娯楽施設とプラネタリウム計画案(メリーランド州シュガーローフマウンテン)1924-25年 透視図》米国議会図書館版画写真部蔵 Photo: Library of Congress LC-DIG-ds-10423



2012年にフランク・ロイド・ライト財団から図面をはじめとする5万点を超える資料がニューヨーク近代美術館とコロンビア大学エイヴリー建築美術図書館に移管され、建築はもちろんのこと、芸術、デザイン、著述、造園、教育、技術革新、都市計画に至るフランク・ロイド・ライトの広範な視野と知性を明るみにする調査研究が続けられてきました。

本展ではこうした近年の研究成果をふまえ、財団およびエイヴリー建築美術図書館の全面的な協力のも

と、帝国ホテルを基軸に、多様な文化と交流し常に先駆的な活動を展開したフランク・ロイド・ライトの姿を明らかにします。








フランク・ロイド・ライト《大バグダッド計画案(イラク、バグダッド)1957年鳥瞰透視図 北から文化センターと大学をのぞむ》1957年 コロンビア大学エイヴリー建築美術図書館フランク・ロイド・ライト財団アーカイヴス蔵 ©The Frank Lloyd Wright Foundation Archives (The Museum of Modern Art | Avery Architectural & Fine Arts Library, Columbia University, New York)





世界三大建築家のフランク・ロイド・ライトの建築についてより多角的に深く知ることのできる貴重な機会です。



余談ですが、日本には見学可能なフランク・ロイド・ライトの建築が二つあります。

(実は母国アメリカ以外で唯一フランク・ロイド・ライトの作品が現存するのは日本だけ)

自由学園明日館と山邑邸(ヨドコウ迎賓館)。


個人的にではありますが山邑邸の見学はおすすめです。

自然との調和、備え付け家具の美しさ、取り入れられた和のエッセンス。細部に魅力が宿ります。


いまからの紅葉の季節にもおすすめです。




2023年10月21日[土]―12月24日[日]

豊田市美術館


愛知県豊田市小坂本町8丁目5番地1



本展は2024年1月11日(木)〜3月10日(日)東京都パナソニック汐留美術館

2024年3月20日(水)〜5月12日(日)青森県立美術館にて巡回予定となっております。

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